ネコの腎臓病
腎臓病は、猫の腎疾患の中でも一般的な病気で、原因に関わらず腎臓の組織が損傷して委縮するのが特徴です。
腎臓病は、病気そのものの名前ではなくて、腎機能が正常に働かなくなっている状態の総称になります。この状態が進行し、最終的に腎臓が機能しなくなる状態を腎不全と言います。
徐々に(慢性的に)腎臓の機能が落ちていくものが、慢性腎臓病。
腎組織は、一度損傷すると元に戻らないため、慢性腎臓病と診断されたら治ることはなく、薬や食事によって腎機能の低下を遅らせることしかできません。
つまり、いかに早い段階で腎機能の低下に気づくことができるか?が重要になってきます。
慢性腎臓病のステージ
猫の慢性腎臓病には、その進行度によってステージングがあります。
慢性腎臓病は、腎組織が75%程度障害されるまで症状が出ず、最初の症状である多飲多尿の症状がみられるようになった時には、すでに残りの腎機能は30%を切っています。
ステージ3では尿毒症の症状が出始め、気持ち悪さから食欲不振や嘔吐を繰り返すようになります。ステージ4では、さらに尿毒症が進行し、自宅点滴等の毎日の積極的な治療をしなければ、生きながらえることは難しくなります。
クレアチニン(mg/dL) | 腎機能 | 症状 | |
---|---|---|---|
ステージ1 | < 1.6 | 33% < | 無症状 |
ステージ2 | 1.6 – 2.8 | 25 – 33% | 多飲・多尿 |
ステージ3 | 2.9 – 5.0 | 10 – 24% | 食欲低下・嘔吐 |
ステージ4 | 5.0 < | < 10% | 貧血・元気消失 |
ネコの腎臓病を早期に発見する方法
不可逆な腎臓だからこそ、いかに早く腎臓病の兆候を見つけられるかが大切。
症状が出たときにはすでに遅し、というわけなので、定期的に下記の検査を受けましょう。
定期的に検査を受けていても、突然腎機能が低下する(急性腎不全)場合もあるため、日ごろからネコの状態をよく観察し、少しでもいつもと違う違和感を感じた場合は、動物病院に行って見てもらうことをおススメします。
腎臓の数値を見る検査項目
- 血液検査(CRE、BUN、Ca、P、SDMA)
- 尿検査(UPC)
- 超音波検査
- 血圧
腎機能が低下すると起こる症状
- 多飲多尿
- おしっこの色や臭いが薄くなる
- 食欲不振
- 嘔吐
- 貧血(ふらつき)
- 元気がない
ウチのネコが慢性腎臓病になってしまったら?と想像してみる
高齢猫の10~30%(15歳以上になると、なんと80%以上とも!)は慢性腎臓病になると言われているくらい確率が高いので、どんなに気を付けていても、腎臓病になるときはなるものです。
愛猫が腎臓病になったときに、ちゃんと介護できる体制が整えられるように、いつか訪れるその時のために準備しておきましょう。
ステージが3、4になってくると、腎機能の低下により、尿素窒素などの老廃物をおしっことして排出できなくなるために、尿毒症が進行し、食欲が減退します。
これを少しでも和らげるために、皮下点滴が必要になります。
週1回ペースであれば、病院に通うのもありですが、毎日点滴が必要になると、さすがに毎日病院に通うわけにもいかず(時間的にも金銭的にも)、最終的には自宅で点滴を行うようになります。
そうなったときに、毎日、決まった時間に点滴をしてあげられる環境があるでしょうか。
食欲がなくなってしまった猫のために、愛猫が自力で食べられる餌を探すことができるでしょうか。
最終的に強制給餌になったときには、1日何回にも分けて、少量の流動食をシリンジで与えることになるかもしれませんが、それができるでしょうか。
猫(に限らず生き物)を飼うということは、老いて介護が必要になったときのことまで考えて、準備しておくことが大切です。
飼ったときは、まだ若くて、小さくて、健康な子であるかもしれませんが、ペットは必ず老い、亡くなります。これはこの世に生を受けた以上、避けて通ることはできません。
自宅点滴が必要になり、猫の介護が始まると、旅行には行けません。
泊りの出張にも行けません。
1回量の餌が少なくなるので、1日6食以上食べさせることだってありますから、在宅勤務でなければ対応しきれません。
幸いにも腎臓病やその他の病気にならず、穏やかに最後を迎えられる猫もいると思いますが、確率的に3匹に1匹は慢性腎臓病になる可能性があるのです。
そうなったときに、確実に最後までお世話ができるように、今のうちからしっかりと準備しておきましょう。
大切な我が子と、最期まで、ずっと一緒にいるために。
それでも慢性腎臓病とともに生きていく
このブログをご覧になっている方の中には、ネコさんが腎臓病になってしまって、情報収集をしている最中という人も多いと思います。
私自身も、2022年の2月に、我が家のスコ様が腎臓病になったときに、あらゆる情報を必死でかき集めたことを、今でもはっきりと覚えています。
たくさんの情報を得て、動物病院の先生と二人三脚で対処を試行錯誤しつつ、未だに悩みつつ前に進んでいます。
慢性腎臓病は完治しませんが、進行を遅らせることはできます。
病気としっかり向き合い、今、飼い主として自分ができることは何かを考え、ネコさんのQOLをできる限り保ちながら、残されたニャン生を楽しくサポートし、ネコさんとともに生きていきましょう!
このブログが、そんなあなたの一助となることができるなら、こんなにうれしいことはありません。