世の中のネコ愛の強い方々の活動を取材して、その想いや素晴らしい活動内容などを紹介する、ネコと終活2024年の「想いをつなぐ」企画。
第2回は、ねこ大家(株式会社ねこ家)の池田様、岡本様にお話を伺いました。
▶▶▶ 本記事は【後編】となります。前編はこちらのリンクからどうぞ。
それでは、前編からの続きをお楽しみください。
ねこ大家さんが尖っているワケ
ここまで色々と、ねこ大家様についてご紹介してきたので、お気づきの方はお気づきだと思うのですが、そう、尖っているんです。ネコリノベが。
人よりも、猫ファーストで作られたようにも見える数々の夢のような物件。
でも、お話を聞いてわかったことは、そこには、ちゃんとビジネスとしての戦略がある、ということ。
猫好きさんはもちろんですが、自分のビジネスをやっていきたい人、これからSNSをやりたい人も必見です。
🔽ねこ大家様のインスタで尖ったお部屋が見られます
https://www.instagram.com/nyankichi_neko/
- ―― ねこ大家さんが作られるお家って、猫のために作った部屋に人が間借りしてるように見えるぐらいの勢いで尖ってると思うんですよね。そこまでがっつり尖らせたのには、どんな意図があるのでしょうか。
- ねこ大家:
-
一番は猫が飼えるお部屋を増やす普及活動のためですね。
先ほども言いましたが、知ってもらうための広告です。
それは野良猫を1匹でも多く家の中に入れたいからです。
ねこ大家の物件のうち、あそこまで尖っているものの方が実は少ないです。
やっぱりぱっと見て、人ってみんなビジュアルで物事を認識するじゃないですか。
いくら自分たちは、こんなことやってますって言っても、視覚でそれが認識できなかったら多分通り過ぎると思うんですよね。
見た目で「何だコレ!!」っていうようなところから入ることによって、こういう活動を気に留めてもらえるとか、見てもらえるっていう方が僕としては先だったんですよ。
今まで猫の家とか、賃貸でやっている会社さんは、少なからずあったんですよ。
でも、なかなか長続きしてないんですよ。
1件2件やって終わって、とか、2件3件やって終わってとかって、あまり長続きしていない。
なんでかなと僕なりに分析したら、結局人の目にとまるぐらい尖ったことやってなかったのかなと。
- ―― そういうことなんですね。私ジャングルジムのように箱がいっぱいワーッて積み上がった書斎のお部屋(前編参照)、あれはすごいなと思ってて、めっちゃいいですよね。
- ねこ大家:
-
良い部屋があっても、結局それって周知して知ってもらって、広がらないとその活動の意味がないじゃないですか。
- ―― そうですよね。そうじゃないとビジネスとして成り立たない。
- ねこ大家:
-
そうなんです。
広げるためには、それが絶対に必要だったので、人が見ていいな、猫飼ってなくてもすごいな、とかっていうふうに思ってもらうものを作るのが、さっきの(ジャングルジムの箱の書斎の部屋)なんですよ。
- ―― そうなんですね。そうすると、全部があそこまで尖ったものじゃなくって、猫のことを考えた普通の間取りの物件もあるんですね。
- ねこ大家:
-
そっちの方が多いです。
むしろ新築戸建てとかで建てられる場合は、はっきり言ってそっちですよね。
やりすぎない分、長く住めて、将来ねこ設備を入れ替えたりできるように、あえてシンプルに設計をするっていうのを心がけています。
- ―― 私なんかは単純なので、目に入ってきたものをついついそれがデフォルトだと思ってしまうところがありますが、そうではない部分の方が多いということを聞いて、ハッとしました。
- ねこ大家:
-
もし、その住みやすいシンプルな猫と住む家を、僕たちがずっとやっていっても、多分拡散するのにめちゃくちゃ時間かかったと思います。
- ―― 確かにそうかもです。いずれは拡散絶対すると思いますけど、スピード感が全然違うと思いますね。
- ねこ大家:
-
違いますね。
反対にそれだけ尖ったものがぱっと目に入るものをやれば、それ以下のものは作れるっていうふうに皆さん認識もしてもらえるので。
- ―― なんかもう今日はビジネスの講義を受けてるかのような気がしてきました…。あそこまで尖ったのを作りたいとは思っていない大家さんもいらっしゃるかもしれないけど、目を止めてもらうための戦略の一つとして、尖らせてるんですね。いいなってやっぱり目引きますもんね。
- ねこ大家:
-
賃貸の場合は3年とか5年住まれるっていうことであれば、尖っていても全然問題ないと思うんですよ。
コンセプトマンションのように尖ったお部屋って増えてきてるじゃないですか。
ガレージハウスとか楽器が演奏できる防音マンションとか。
それの一環だとは思ってるんですよね。
- ―― ねこ大家さんのお部屋は、インスタ映えするなとか、YouTube映えというか映像映えするなって、いつも思っていて。夢いっぱいのデザインが、いい意味で普通じゃなくて、見てる方が楽しくなっちゃう感じなので、やっぱそういうところがみんな引っかかるんだなってすごく思いますね。
- ねこ大家:
-
僕たちの活動とか、猫部屋が増えて欲しいっていうのもありますけど、あとはこういう部屋があったら、猫飼ってみてもいいなという人が増えてほしいと思っています。
- ―― 本当にそうですよね!
- ねこ大家:
-
外猫を引き取るための、受け皿が増えた方が絶対いい。
だから猫を飼える部屋が増えるのも一つですし、飼いたいって思う人が増えることも必要じゃないですか。
やっぱり両方必要だと思うんですよね。
- ―― もうどっちもリーチできると思います!ねこ大家さんの素敵なデザインっていうのは、どのように考えているのですか?
- ねこ大家:
-
僕がコンセプトを考えて、ねこ大家スタッフを含めいろんな人に図面を起こしてもらっています。
案件も多く数をやらないといけないので、イメージを伝えて、この部屋はこのコンセプトでこれをやってほしいとお願いして、1回図面に書いてもらって、手直ししてまた投げてっていうやり方ですね。
- ―― こういったコース(ねこ大家様事務所のキャットウォークを指さして)のデザインも全部考えられているのですが?
- ねこ大家:
-
事務所も自分たちで考えていますよ。
- ―― すごいですね…。(アイデアは)浮かんでくるのですか?
- ねこ大家:
-
たくさん経験すると何となく、ここに何があったらいいとかっていうのは分かるんで。
まず間取りを見るっていうことと、あと何人で住んでる、何匹飼うとかっていうのを、今までやってきたことの集合体になるんですよ。
同じ部屋は作りたくないんで、新たなことを何か1個チャレンジして作ってみるっていうのはやりますね。
- ―― それだけたくさん手掛けていると、生みの苦しみなどはないのでしょうか?特に、まだ作ったことがないその新たな1つって言うのを生み出す時に。
- ねこ大家:
-
仮にですよ、全く同じ間取りの部屋が100室あって、これを考えてくださいって言われると、多分そうなると思うんですよ。
けど、住む人も変われば、不動産って同じものが2つとしてないじゃないですか。
建物は間取りが変われば動線も変わるし、住む人も住む猫も変わるんで、それはないですね。
あのブロック(ジャングルジム)の書斎のやつも、実際あれは見たままあんな感じですけど、本当はもっと穴とか開けて、グニャグニャ~ってできるようにしたいんですけど、それは次の機会でってなったら、コンセプトはまた若干変わるし、部屋も変わるから見せ方も変わるんで。
- ―― なるほど~。
- ねこ大家:
-
見え方も変わってくるんですよね。1回作ったら、次はこっちの木材で作ろうかなとか。
- ―― あのブロックのお部屋って、箱がランダムに積み上げられているように見えるのですが、あれはランダムなのですか?それとも計算されているのでしょうか。
- ねこ大家:
-
あれは、この部屋の担当している設計士さんに模型を作ってもらいました。
発泡スチロールの模型を作ってもらって、これでいいですか?こんな感じでいいとかっていうやり取りをして、最後に詰めていった感じ。
- ―― そうなんですね。あれは何かラフに積み上がってるように見えて…
- ねこ大家:
-
結構全部計算ですよ。
担当の設計士さんが最終的に調整してくれて、最後その幅と動線を僕が確認しました。
ねこ大家では、家や部屋を作る際は、担当する設計士さんを決めて、僕とでキャッチボールしながら作っていくっていう感じですね。
- ―― なるほど、そういう感じで、あのたくさんの尖ったお部屋が出来上がるのですね!!
ねこ大家さんの看板猫たちと住宅の耐震性能について
ねこ大家様の事務所には、看板猫たちがいます。
そして、看板猫たちは、時々ネコハラをし、時々新しい物件に冒険をしに行きます。
🔽ねこ大家様のYouTubeで看板猫さんたちが見られます
https://www.youtube.com/@necooya
そんなとってもかわいい看板猫さんたちのこと、そして、話は耐震性能のことになり…
- ―― 動画とかで拝見していると、なんか猫ちゃんたちが、新しいお家に入ってワーッて遊んでるんですけど、あれはみんな新しいお家に入るのはそんなに苦にならない子たちなんですか?
- ねこ大家:
-
ならない子たちだけを連れて行ってます。
- ―― スタメンがいるんですね。
- ねこ大家:
-
うちら2人で猫が全部で12匹いるんですけど、残りの子たちは移動が嫌な子もいるし、ここの事務所も無理な子もいるんで、そういう子らは連れてきてないです。
- ―― そういうことなんですね。新しいお家に4匹みんながワーッて走っていて、なんかすごくいい感じに動画が撮れているので、すごいなぁと。
- ねこ大家:
-
その子らは、すぐバーッと行きますね。
- ―― そうすると、新しい環境大好きな子たちを車で現地まで連れて行くんですね。
- ねこ大家:
-
そうですね。
基本的に毎日僕が会社に連れてきてるんで。
- ―― あ、猫ちゃんたちは、ここ(事務所)に住んでいるわけではないんですね。
- ねこ大家:
-
毎日会社と自宅を、その4匹は一緒に通勤しています。
だから新しい環境や知らない人も何とも思わないですね。
あの子(下の写真)は、全盲のきなこです。
たまに事務所に連れてきます。
事務所の角のキャットタワーに寝ているのが、きなこちゃん。
-
きなこちゃん、拡大。(かわゆい🐾)
- ―― え、でもキャットタワーに上ってますね…。
- ねこ大家:
-
気付いたら普通に上がってて。
最初「えっ?!」て思ったんですけど、一応全部、手を伸ばせば触れるくらいの間隔にしてあるんで。
- ―― なるほど。家具やステップの配置を、ある程度距離を短めにされているのですね。
- ねこ大家:
-
自分でここに足乗せたら危険とか考えながら、行ったと思うんですよ。
足腰が悪くなる老猫は、こういう全盲の子と変わらない動きになってくると思うんでね。
近年、猫の寿命も長くなってきているので、20歳でも快適に過ごせる家を作るのが一番かなとは思いますね。
- ―― そうですね。常に猫ファーストで、どんなふうに歳を重ねても、病気になったりとか、例えばきなこちゃんのように目が見えなくなっても、それに対して家も追従してくるのは素晴らしいですよね。
- ねこ大家:
-
元々新築であればね、設計であったり性能さえしっかりしていれば、あとはもうその子らの成長だとか、新しく入ってくる子たちによって、変えていくのはそこまで苦じゃないんですよ。
ただ、もう建売で買いましたってなると、その家の耐震等級が3じゃなかった場合、その時点で、もし自分が出かけてるときとかに、地震が起きたら潰れてるっていうことが普通にありうるので、そんなことになったら長寿も何もないじゃないですか。
- ―― 本当にそう思います。名古屋もこれから地震がちょっと怖いです
- ねこ大家:
-
飼い猫からすると、もうそこが家でもあり町でもあるので、それ以外頼るところがないじゃないですか。
その中を自由に好きなようにさせてあげるっていうのは、優先順位では2番目なんですよ。
まずは潰れないっていう方が最優先なんです。
- ―― 地震に耐える家に住みたいですね。
- ねこ大家:
-
国の基準は耐震等級1からOKなんですけど、昨今の大きな地震で(耐震等級)3以外はかなり被害があったと聞いています。
- ―― 耐震等級3は地震にもかなり耐えられると聞いたことがあったのですが、やはりそうなのですね。
- ねこ大家:
-
耐震補強には1つ落とし穴があって、中古戸建て買ってリノベして、耐震補強するっていう方法あるじゃないですか。
でもあれって、厳密に言ったら、地盤改良が必要なケースも多いんですよ。
地盤とその上の建物補強をとセットにして、作らないといけないので、上物だけやったとしても、大丈夫かっていうのあるじゃないですか。
- ―― 一番基礎大事ですよね。
- ねこ大家:
-
なので、中古買ってリノベするっていう人は、そこは注意した方がいいですよっていうのはありますね。
- ―― 土地を買って、調べて、(地盤を)強くして家を建てるっていう。
- ねこ大家:
-
新築なら地盤調査と地盤改良しますからね。
そんな資金がない、でも都心に住みたいっていう人は、比較的新しい中古の分譲マンションを買って住む方が地震の心配は軽減できると思います。
分譲マンションだったら、RCで作ってますし、地盤改良もしっかり対処してると思うんで。
でも戸建ての耐震等級1は、もう(大きな地震に耐えるのは)難しいでしょうね。
- ―― そこまで言い切れるくらいに耐震等級は大事なんですね。
猫用住宅と謳っている業者の罠~謳い文句に騙されないで!~
最近流行りの、ペットと住む家。
なんと魅力的なキャッチコピーなんでしょう。
猫の下僕の皆さんならば、きっと将来は猫のための家を建てたい。
そう思う方も多いのではないでしょうか?
もし、今後お家を建てたいと思っている方は、是非きちんと調べて、猫に詳しい建築業者さんに依頼をしてくださいね。
猫のためにも、あなた自身のためにも。
- ―― ハウスメーカーや工務店などで、ペットと共生できるっていうのを売りにしているところも、最近少し増えましたよね?
- ねこ大家:
-
ペット共生とか謳ってる工務店さんは増えてきてると思うんですけど、まだ1件も建てたことないっていうのは実は結構あるんですよね。
- ―― え!そうなんですか。
- ねこ大家:
-
あまり他社さんのことは言いたくありませんが、実際にその広告を見て行かれたお客様から伺います。
事例を見せてといっても一般住宅の事例や猫ハウスの場合はパースや設計図のみしか出てこないとか。
他にも猫の設備はどういうので、どんなものをつけるかっていうのは全部施主さんの方でやってくださいって言われて、困ったって相談に見えたこともありました。
話し合いはされたようですが、(業者の方が)後ろ向きで、僕ら責任持てないから自分たちで決めて、その通りやって後でクレーム受けませんよって言う感じでしたね。
工務店さんの言い分も分からないこともないですが、ペット共生を謳っているのであれば、最後まで施主さんと向き合うべきです。
- ―― 最終的にどうなったんですか?
- ねこ大家:
-
家の引き渡し後に猫リノベしたいと言われましたが、お断りしました。
当然費用もかかるし、あとは何て言うか、環境的にもあるじゃないですか。
新しく建てた直後に、一部壊すとか、新築ではさすがにありえない。
悔しいですが施主さんの方から業者さんに歩み寄るか、あるいは、最初はもう好きな猫製品(キャットタワーとか)を置いたりして、それでも限界がきて、数年経ったらまた(ねこ大家に)言ってきてくださいって。
- ―― そうですね。次回、メンテナンス時期が来た時に。
- ねこ大家:
-
ペット共生の広告に不満を感じてお問い合わせは結構ありますね。
- ―― 猫が大好きで、猫のためにお家を建てたい!と思っていらっしゃる施主さんからしたら、辛いですね。
- ねこ大家:
-
契約したら、意見が全然合わないとか営業担当との温度差がすごいとか。
業者さんたちからすると、受注は取りたいけど、いつも建ててる普通の家を建てたいんですよね。
- ―― 確かに、そもそも猫好きの熱量はめちゃくちゃ高いですからね・・・。家じゃなくても、そうでない人に理解してもらいにくい。
- ねこ大家:
-
猫の好き嫌いに関わらず、業者さんは自分たちの得意分野の家が建てたい。
その方が、話も早いし、リスクも少ないし、知らないことに手を出して、それが間違ってたら言われるし、嫌じゃないですか。
営業成績は結局、1棟は1棟ですからね。
- ―― そもそもの思想が違いますよね。
- ねこ大家:
-
何度か猫と暮らす家を宣伝している会社さんとお話しする機会があったのですが、話を伺うと別に猫の家を作りたいんじゃないんですよ。
その人たちは普通にやってても競合が多いから、ねこ大家さんみたいに猫の家を作っていると謳ったらお客さんが来るのではと言ってましたね。
もちろん全て本音ではないと思いますが。
僕は反対に猫と暮らす家以外は作りたくないんですよ。
実際、とある猫と暮らすのを売りにした家を、うちのスタッフが見にいったんですけど。
そしたらもう、危なすぎると。
尋常じゃない。
- ―― その危なさは普通の人は気づかない?
- ねこ大家:
-
気づかない人もいます。
お客さん自身が見慣れてないんですよ。
猫と暮らす家がどういうものかっていうのを。
だから、これが危ないということに気づかない。
見た目「すごい」ってそれっぽい感じに見えるんですよ。
いっぱい見られた人からすると、これが駄目だとかわかるんでしょうけど。
実際僕らはもう数多くやってて、自分らの猫が施工チェックをして、全部それで動線とかを確認をしてるんですよね。
猫の家を作りたい理由も、保護猫活動をやってきて、ちゃんと積み上げてきています。
だから、そういうところに行かれる方は仕方がないし、でも家を建てるって言ったらたくさん調べたうえで、うちに来られたときは本当に嬉しいです。
今日の午前中も滋賀県から来られましたね。
- ―― ねこ大家さんの思想は、もう本当に広めたい、みんなに知ってほしいですね。
- ねこ大家:
-
他にも素晴らしい業者さんはたくさんいますよ。
ただ、あまり事例がないのに、いかにもいっぱいやってるように謳っている業者さんには注意してほしいです。
- ―― 消費者からはなかなかわかりにくいところですからね。
- ねこ大家:
-
先ほども触れましたが、猫と暮らすのを売りにした家をスタッフが見に行って、こんな危ないもの作って・・・、っていう。
細い梁を歩かせるようにしてるんですけど、危なすぎて。
これどうすんの?下落ちたらって。
- ―― 危ないですね。猫だって足を滑らすことありますからね。
- ねこ大家:
-
例えば、柱があって梁と交差してるところって、こっちからこっちの梁に行くのに、空間を跨がないと行けませんよね。
ちょっと斜めに。
そんなところは安全になるよう処理(踏み板など)をすると思うんですけど、普通に通路にしてる。
何を考えて設計してるのかと。
僕らは猫に梁を歩かせるっていうことはしないですね。
- ―― 落ちたら本当に危ないですからね。
- ねこ大家:
-
落下防止ネットなどの方法もありますが、部屋の見た目や印象も悪くなります。
- ―― そういう設計をする人は、猫を飼っていないのかもしれないですね。
- ねこ大家:
-
僕らも、機能的なものはつけたいんですけど、やっぱり安全が一番なんで。
キャットウォークとかそういうのをつける前に、新築だったら耐震等級3にする、断熱を最高等級にする、それから気密性もあって、第一種換気にして、もう高性能住宅の中で長生きできるような、人が健康になるので、猫も健康になるっていうのを作ってから、猫設備を作りましょうって。
- ―― 猫ファーストの家と言いつつも、基本は絶対守るみたいな。
- ねこ大家:
-
そうなんですよ。
むしろそっちのほうが大事です。
どちらかというとね。
なので、(ネコと終活がねこ大家様から今見せてもらっている)この図面も、そんな梁とかそういう派手さはないですよね。
- ―― でもこれだけでも全然十分ですよね。
- ねこ大家:
-
ここから、注文住宅であればね、猫何匹飼ってますかって年齢とか性格を聞いて、足していくって感じです。
基本設計はこれでまず行ってっていう感じで。
- ―― こうあるべきだみたいなお手本がもっと普及してほしいと、心から思います。
ねこ大家様のこれから
これまでたくさんの猫のための家を作ってきたねこ大家様。
ホームページも新しくなり、社名は株式会社ねこ家さん。
これからまた新しいステージに向かってどんどん突き進んでいかれることでしょう。
ねこ大家様が、想い描く未来とは?
- ―― ねこ大家さんは、これまで色々やってこられたと思うんですが、今後、こうしていきたい、もっとこんなふうになりたい、みんなにもっとこんなことを伝えたいみたいな想いはありますか?
- ねこ大家:
-
今までずっとやってきた中で、段階があると思ってて。
周知させるっていうのもあったんですけど、それ以外にも、外猫とか野良猫は、僕は不動産の力で幸せできると思ってるんですよ。
その証明というのが、猫可賃貸を増やすことによって、猫と住める人が増えるじゃないですか。
昨年、そこの第一段階が終わったかなと思って。
不動産で外猫が入れる物件が増えて、ひとまずただ入れるっていうだけで、今はクリア。
まずはそこがないと駄目だと思う。
そこをクリアしたら次は何かっていったら、今度は建築の力で猫を長生きさせたりだとか、より幸せにすることができると思っています。
なので、次は猫と暮らす建築の普及活動であったりとか、家の中にいる子は、生涯長生きできて幸せに暮らせるという形がちゃんと作れれば。
なんていうか、今までは人の力だけで、例えば、保護猫施設の方であったりだとか、保護猫猫カフェの人とか、もうマンパワーで何とか解決してきたところを、僕らが持つ建築や不動産の力も使って解決していきたい。
保護猫活動をされている人たちって、お仕事でもないのに、すごく労力と時間をかけてされてる方も多くて、かなり負担になってたと思うんですよね。
お金も入ってこないし、自分の身銭を削ってやっている方もいます。
- ―― そうですね。
- ねこ大家:
-
なんていうんですかね、いいことやってるんですけど、長いことやればやるほど疲弊してきて、釣り合いが取れないんですよ。
やってることとの。
もっと踏み込んで言うと、どの団体さんも猫を助けたいという想いで活動しているのに、いがみ合ったりとか。
- ―― あるあるですね。
- ねこ大家:
-
どの団体さんの活動も素晴らしいので、仲良くしてほしいですね。
だから、そういうマンパワーでできることっていうのは、もうやり尽くされてると思ってるんですよ。
じゃあ、次できることって言ったら、もう不動産の力で場所の確保や、建築の力で快適な環境を作る、そこに入っていくしかないかなっていう。
猫を飼える家が増えれば、団体さんたちが預かってる猫たちが出せるわけですから、そうしたらまたそこの空いた枠に、外猫が入れる。
結局ソフト面は、ある程度できているのに、全然ハード面が追いついてないってことだと思うんです。
だから、そこの発信をしていくということですね。
ハード面を扱うとなると、なにかしらの事業をしている方になるかと思います。
建築やってる、不動産持ってる人たちは、ある程度ビジネスとして成立をさせないと絶対やらないじゃないですか。
- ―― そうですね。
- ねこ大家:
-
今までの保護猫活動って、ビジネスとして成立しないから、心労で結局擦り減ってしまうことが多いですが、不動産と建築だったら、一つの案件がそれなりの収益になると思うので、ビジネスになるっていうことを僕たちが証明することによって、新規参入者が出てくると思うんですよね。
そうなれば、間接的にそれが広がって、猫が住むところが増えて、助けられる猫が増えるっていうことになるんじゃないかなっていうふうに思ってますね。
それを期待してるというか。
- ―― それは期待しちゃいますね。受け皿を是非作ってほしい…。
- ねこ大家:
-
人の力で外猫ちゃんに餌をあげに行って、この子たちを保護したいと思っても、結局猫を飼える場所がなかったら、もう物理的に無理じゃないですか。
- ―― その通りですね。
- ねこ大家:
-
だから、不動産という場所の力が必要で。
ただ連れて行くだけじゃなくて、やっぱりその子たちがそこでずっと快適に暮らせるようにっていうのを考えると、そこで初めて建築の力が必要っていうことになるので。
- ―― この活動広がってほしいですね。そしていろんな地域でこういった活動が行われれば。
- ねこ大家:
-
それができれば、人の力がより活きてくると思ってます。
何倍にもなると思うんですよね。
そこがあれば、マンパワーでやってきた人たちはもっと頑張れるというか、頑張ったことが身になると思うんですよ。
それがないがために、みんな苦労してる。
一時的に里親募集したけど、預けるところすらない。
- ―― この思想がみんなに広がってほしいです。
- ねこ大家:
-
これが僕らのやってる活動の一番の根幹かなと思います。
ねこ大家様グッズのエコバッグのデザインもカワイイ。
- ―― ワクワクしますね。それは本当に夢がある。
- ねこ大家:
-
とは思いますけどね。
今の話は外猫に限った話ですけど、もう家の中に入ってる猫からすると、建築の力で長生きできる、もっと快適に一生を過ごしてもらうっていうのは、引き続き追求していけると思います。
- ―― 人専用住居ではなかなか難しいことも、こういう猫ファーストの家のがあれば、猫もより快適に暮らせますよね。
- ねこ大家:
-
日当たりであったりだとか、あとは外を見られる環境であったりだとか、そういうのを増やしてあげることによって、それが猫自身の活力になったり、ストレス発散になったり、そういうのにつながっていくんじゃないかな、とは思います。
最後に色々図面を見せていただいて…
今回ねこ大家様の事務所に伺って、実物を目の当たりにして感動していたのですが・・・(かつて私の専攻は建築だったこともあり、建物には並々ならぬ興味があるのです)
なんと、ねこ大家様、これから建てる予定の図面まで見せてくださいました!!(感激!)
こんなお宝を見せていただけるとは、サービス精神半端ないです。
そして、一押しポイントは、図面に猫が描かれていること。(キュン!)
平面図に猫が描かれているのなんて、見たことない!(興奮)
次から次へと数々の物件を手掛けているねこ大家様。
その働き方の秘密についても、お聞きしてみました。
- ―― インスタやYoutubeで見ていたこちらの事務所を、一度見てみたくて。百聞は一見に如かずじゃないですけれども、やはり感じたい…。だから今日はこちらに来られて本当にうれしいです。
- ねこ大家:
-
でも、事務所が一番手抜いて作ってますけどね。笑
- ―― えっ!これでもですか?
- ねこ大家:
-
そうですね。だってこれ潰すもんですから。
- ―― 潰す、というのは?
- ねこ大家:
-
移転するんでね。
賃貸となると、できることも限られてて。
原状回復もしないとですし。
- ―― いつ頃移転されるのですか?
- ねこ大家:
-
2年後くらいですかね。
- ―― そうなのですね!ちなみにそちらはまた猫ちゃん仕様になるのですか?
- ねこ大家:
-
究極の猫オフィスにします。
200平米ぐらいあるので、もうバリバリの猫仕様にしようかと。
- ―― バリバリの…(笑)。もうすでに、こういう風にしてみようって言う構想があったりしますか?
- ねこ大家:
-
あります。
ブロックごとに分けたりとか、面白い会議室も作りたいなと。
全部の部屋に、猫が入って来られるようにしたり。
- ―― おお~!!それは楽しみですね。猫ちゃんと会議だなんて。
- ねこ大家:
-
これからやる他の物件の図面、ちょっと見ます?
- ―― えーーーーー!!!よろしいのですか?
- ねこ大家:
-
いいですよ。
(ここで、これから建つ予定のお家のコンセプトや、動線・図面の説明までしていただきました。
ねこ大家さんの図面にはほぼ、猫がいます。カワイイ)
- ―― これから手掛ける物件もかなり多いと思うのですが、年間どのくらい手がけられているのですか?
- ねこ大家:
-
もう数えてないですけど、結構多いですよ。
一つのマンションで5部屋っていうのやったりとか、次4部屋あるでしょ。それから次7部屋あるでしょ。
- ―― わあ、量スゴイですね。でも、この設計というか、こういうアイディアとかも考えるんですよね。
- ねこ大家:
-
そうですよ。
それをバーッと(それぞれの担当者に)投げていくんです。
今、中古戸建のリノベーションが2件あって、新築注文住宅の方も、2件話が同時に進んでいます。
工事は新築2件建築中です。
だから結構数はやってるかなと。
- ―― それは普通の人が働く時間内に何とかなってるものなんですか?
- ねこ大家:
-
それは上手いこと協力業者さんを使ってるっていうのはありますよね。
本当は、自分が1個ずつやればいいんですけど、それだったらあまりにも数ができなさすぎで、効率が悪いんですよね。
だから、1個1個ちゃんと作るっていうのは当然なんですけど、同時に来てる案件のイメージを作って、同時に走らせてます。
- ―― 間違いないです。
- ねこ大家:
-
しかも、図面だけを書くのが上手な人とか、構造計算だけは得意な建築士さんもいるじゃないですか。
- ―― いますね。私、構造計算全くダメな人でした。笑
- ねこ大家:
-
構造計算は、意匠設計全くできませんっていう建築士さんに依頼するんですよ。
待ってましたっていう感じで快く受けてくれます。
- ―― 意匠設計が得意な人には、コンセプトだけをワーッとお伝えする、と。
- ねこ大家:
-
自分でできない分は、担当の設計士さんにコンセプトを伝えますね。
意匠設計を目指したい人だったら、自分の作品にもなりますからね。僕が思ってたやつにプラスアルファで何か足してくれたりだとか、新たな案とかも出てくるんで、そういうのを拾っていったりしながらっていうのもありますよ。
- ―― ちなみにこのアイディアを生み出す時って、iPadなどのデジタル派ですか?それともスケッチブックなどのアナログ派ですか?
- ねこ大家:
-
僕ですか?どうかな~。
- ―― も、もしかして、頭の中ですか?
- ねこ大家:
-
頭の中ですね。
口頭で伝えます。それで描いてくれって言う感じで。
- ―― 言語化が上手くできていて、それがちゃんと伝わるということなんですね。
- ねこ大家:
-
そう、形になってくるから、言葉で言った方が速いので、僕は。
そもそも時間がかかることが嫌いなんで、文字起こしも嫌い。
なんで、もう口頭です。
Zoomで答えて、って言う感じで、アナログですよね。
- ―― なるほどです。それでこんなに数をこなせるんですね。
- ねこ大家:
-
よく言えばそうなりますね。
僕が二、三割のことを言ったら、七、八割図面として戻ってくるっていう感じですよね。
- ―― もう仕組みが出来上がってるんですね。
- ねこ大家:
-
僕は全部自分でやった、いわゆる自分の作品とかっていうのに全くこだわってなくて、数を増やすっていうことにこだわってるんです。
- ―― 確かに。受け皿を広げたいっておっしゃてましたもんね。
- ねこ大家:
-
そうなんですよ。
そっちが先でしょって思うんで、自分が猫の建築家として有名になるとか、そんなことはどうでもよくて。
- ―― いずれなると思いますが。笑
- ねこ大家:
-
いっぱい数(猫の家)を作ったっていう人で有名になるのはいいんですけど。
僕が仕事を取ってきて、イメージを伝えて、それをその人がしっかり作り上げて、その人が有名になればいいだけの話で。
- ―― 需要と供給というか、すごくいい仕組みが出来上がってる感じがしますね。とてもシステマチックな感じがします。
- ねこ大家:
-
あとは、施工する業者さんをもうちょっと増やしたいっていうのはありますよね。
僕らの事業を応援してくれてる人たちの中には、工事会社さんを全国で募集したら殺到するよってみんな言うんですけどね。
- ―― 絶対すると思います。
- ねこ大家:
-
全国で受けて、ワーッて仕事流したらって言うけど、さすがにそれはいきなり品質を担保できないかなと思います。
少しずつ広げていったり、このエリアはこの人、とかっていうのができていっても、その人たちもやっぱり儲からないと真剣にやってくれないんで、1個1個、そこは丁寧に最初の方はやっていけたらいいなとは思いますね。
いきなりバーっとやって、数は増えてるけど期待外れになるのも違いますからね。
今まで僕らは自分たちの目の届く範囲で仕事をしているので、品質はしっかりしたものを作ってきています。
- ―― そこは守りたいですよね。
- ねこ大家:
-
そうですね。
じゃないとね、不動産の力でシェアは増えて、外猫は入れるようになったけど、次、建築の力で快適に長生きさせるってことができなかったら、そこ矛盾してるって話になってくるんで。
数も増やしたいし、しっかりしたものも、どっちも作るっていうことはやりたいですよね。
- ―― その一貫したところ、いいですね。本当に素敵です。
- ねこ大家:
-
職人さんも同じ方向を向いてくれないとね。
どんなに自分らが情熱を語っても、それを、ふーんみたいな感じでされるとね。
- ―― そうですね。
- ねこ大家:
-
猫ちゃんを大切にしましょう!って言う工事のおっちゃんとかがたくさん出てきてくれたら、ねえ。
- ―― そうですね。ねこ大家さんと同じ熱量の方が出てきてくれるとうれしいですね!いや、それにしても、こんなお宝(図面)を見せていただけて、私本当に嬉しいです。いつか自分の家もやりたいですもん。収納とねこのキャットステップが一緒になってるとか、超いいじゃないですか。一石二鳥ですよね。(この時、連続した収納棚の高さ(取付位置)を変えて、その天面をキャットステップとして使用する図面を見ていました。)
- ねこ大家:
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そうなんですよ。
だから家になると、結構シンプルでしょ。
キャットウォークとかないんですよ。
ここから上に上がっていって、こっから箱が積み重なって上に上がれるようになってるんですよ。
- ―― わ、ホントだ。キャットステップ必要ないですね。
- ねこ大家:
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いらないものは極力削ぎ落とすんですよね。
そうなったら、もうこの時点で、結構長い期間使えるでしょ。
若い子から高齢の子まで。
上に行くブロック積み上がってるのは、もう歳取って危ないなら、それだけ外してしまえばいいっていうことになるので。
- ―― やっぱり家とともに猫とともに、成長する、ずっと変化し続けるお家、いいですね。
インタビューを終えて
なんと、インタビューの後も、色々これからの物件の図面を見せていただきながら、説明していただきました。
ねこ大家様の、サービス精神の旺盛なことと言ったら…。
こんな建築素人の私にも、図面を見せて、コンセプトから将来のメンテナンスのお話まで、色々わかりやすく教えていただきました。
終始ワクワクしっぱなしの取材となりました。(誰得かというと、完全に、ネコと終活得です。笑)
- ―― 本日は本当にありがとうございました。幅広く、色々なお話が聞けて、とても勉強になりました。最後に一言お願いいたします。
- ねこ大家:
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猫と暮らす家づくりはとても奥が深いです。
僕たちもまだまだ勉強していかなければなりませんが、最終的には安全が一番です。
奇抜じゃなくて機能性を持たせるっていうふうに、僕らもだんだん回帰していったんですよね。
最初賃貸で、バーンと見せるときは、とにかく派手なものを作っていきました。
もちろんそれは、安全性もこだわりながらやったんですけど、だんだん数を重ねていくうちに、派手じゃなくてもちゃんと運動ができて、こういったデザイン性があるものができて、見栄えも良くて、長く使えて安全なもの、っていうところに今は着地できていると感じます。
やればやるほど。
- ―― だんだん知見が貯まってきて、今は最適化されてきているというか、むしろ無駄をそぎ落とし、機能美として収束しているのかもしれないですね。映えるのも大事ですが、やはり一番大切なのは安全性含む機能ですよね。
- ねこ大家:
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そうですね。
それがいいと思っています。
ねこ大家様のお話を聞いていると、人と猫と家、全てが調和がとれて幸せで健康な状態である、という本当にブレない信念のようなものをひしひしと感じます。
前回に引き続き、今回も、猫のお話はもちろんですが、加えてビジネスとして保護猫活動を推し進めるということがどういうことなのかということを、しっかりと教えていただきました。
猫好きさんのみならず、これからビジネスを始めようと思っている方にも、非常に参考になるお話だったのではないでしょうか。
池田様、岡本様、今回は本当にありがとうございました。
ネコと終活が、将来、猫と共生する家を建てるときには、是非ねこ大家様に設計していただきたいと、企んでおります。
これからも、色々な物件をインスタ等で拝見するのを楽しみにしています!
(そして、事務所が新しくなる時は、是非また取材に伺わせてください!!)
ねこ大家様からいただいたお土産たち。(ありがとうございます!)
▶▶▶ 前編はこちら。
前編では、猫用住宅と人用住宅の違い、ねこ大家様と保護猫活動、猫飼育可の物件が増えない理由などについて、取材した内容をお届けしていますので、是非ご覧ください!