おひとりさまが亡くなった後、その人が持っている財産はどうなってしまうのでしょうか?
人生は予期せぬ事が起こります。
若いうちは、あまり死について意識することがないかもしれませんが、突然の事故や病気などで自分が亡くなってしまうということは、誰にでも起こりうるのです。
もちろん、あなたにも。
おひとりさまの相続先は、親族の有無によって変わります。
何も準備していなければ、親族がいる場合は親族(法定相続人)に決められた割合で相続され、親族がいない場合は国庫に入ります。
自分の死後に、自分の財産がどうなっても構わない、ということであれば特に何もする必要はありませんが、もしあなたに財産を残したい特定の人(ネコさんなどのペットも含む)がいるのであれば、遺言書の準備をしておくことをおススメします。
遺言書とは?
遺言書は、自分が亡くなった後に、自分の意思を確実に伝えるために、遺産分割や相続に関する指示などが書かれた書類です。
遺言書がなければ、法定相続によって財産が相続されますが、法定相続人以外に財産を残したい場合などには、遺言書が必要になります。
遺言書の種類
遺言書には、大きく分けて以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自筆証書遺言とは
遺言者(自分)で手書きをして押印をする遺言書。(財産目録のみPCや代筆で作成可能)
遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認という手続きが必要になります。
自分で作成するため費用ががかりませんが、要件を満たしていない場合は無効になる可能性があるため、注意が必要です。
また、自分で保管した場合は、遺言書が紛失したり、第3者によって改ざんされる可能性や、そもそも遺言書の存在を誰も知らず、せっかく書いた遺言書がなかったものになる恐れもあります。
※遺言書の紛失や改ざんを防ぐために、自筆証書遺言書と画像データを法務局で保管する自筆証書遺言書保管制度というものもあります。(自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は、検認は不要になります。)
公正証書遺言とは
公証人と呼ばれる人が、遺言者(自分)から聞いた内容を公正証書として文章にまとめる遺言書。
法律の専門家である公証人が遺言書を作成してくれるため、自筆証書遺言のように遺言書が無効になる可能性が少なくなります。
また、遺言書の原本が公証役場に保管されるため、遺言書の紛失や改ざんがありません。(遺言書の作成費用は、価額によって異なります。)
公正証書遺言は、家庭裁判所における検認の手続きは不要となります。
秘密証書遺言とは
内容を秘密にしたまま、遺言書の存在のみを公証人と証人2人以上で証明する遺言書。
遺言者が遺言書を作成し、それを封筒に入れて、公証人と証人2人以上がその遺言書が本人のモノであるということを証明する方法です。
自筆以外も可能で、第3者が代記したものも可能です。
秘密証書遺言は遺言者本人が保管する必要があるため、紛失や改ざんの可能性がありますが、自筆証書遺言と異なり遺言書保管制度を利用することができません。
遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認手続きが必要になります。
遺言書に含まれる内容
遺産分割に関する指示
遺産分割には、法定相続分や自由財産分といったルールがありますが、遺言書にはこれらの分配方法に加え、独自の指示をすることができます。
例えば、特定の相続人に特定の財産を贈る、あるいは団体や慈善団体に寄付するなど、自由度が非常に高いです。
葬儀に関する指示
遺言書には、自分の葬儀についての指示を記すことができます。
例えば、火葬・土葬、仏式・キリスト教式など、希望する形式を指定することができます。
遺品の処分に関する指示
遺品の処分についても、遺言書で指示することができます。
例えば、家具や衣服、書籍などの処分方法や、誰に譲るかを指定することができます。
保険金の受取人指定
生命保険や医療保険などの保険金は、指定した受取人に受け取ってもらうことができます
遺言執行者の指定
遺言書には、遺言執行者を指定することができます。
遺言執行者は、遺言書に書かれた指示を実行し、遺産分割や遺品整理、葬儀などの手続きを代行する役割を持ちます。
遺言執行者は、任意で指定することができますが、指定しない場合には、家庭裁判所が選任します。
これらの内容以外にも、遺言書には様々な指示が記されることがあります。
遺言書を作成する際の注意点
遺言書の内容が明確であること
遺言書に書かれた内容が明確であることが求められます。
例えば、「〇〇さんに車を譲る」という指示では、具体的な車種や財産の詳細が不明確であるため、遺産分割の際にトラブルが生じる可能性があります。
遺言書の存在を相続人に伝えておく、もしくは遺言執行者を指定する
自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は、遺言書が見つからないと、当然、遺言書がないものとして扱われるため、特におひとりさまの場合は、保管場所や死後に遺言書を検認してもらえるような手配をしておく必要があります。
遺言執行者は遺言書で指定することができ、身近にお願いできる人がいない場合は、行政書士などが遺言執行者になることが可能です。
遺言書を適宜更新する
早めに遺言書を作成した場合は、状況や心境が変わる場合もありますので、そういったときには遺言書の内容も見直しましょう。
遺言書はいつ作成するべきか?
遺言は判断能力が亡くなった場合にはできないため、認知症になってしまった後では遺言書を作成することはできません。
15歳以上であれば、遺言書の作成はできるため、終活の一環として判断能力のある元気なうちに作成しておいた方がよいでしょう。
また、必要に応じていつでも遺言の撤回(取り消し)や変更ができるため、早めに作っておいても問題ありません。
まとめ
遺言書は、自分の意思を明確に伝えることができる重要な書類です。
遺言書には、遺産分割の指示や葬儀に関する指示、遺言執行者の指定など、様々な内容が書かれますが、書いて残すことが目的ではありません。
遺言を執行できてこそ、遺言書としての意味を成すということを理解しておきましょう。
おひとりさまの相続に関する遺言書は、自分自身で書くことも可能ですが、例えお金がかかったとしても弁護士や司法書士に相談し、確実に遺言が執行されるように遺言執行者を専門家に依頼するなどして、せっかくの準備が無駄にならないようにしたいものです。